■剣
今日の打ち合わせ、遅くなりましたね。
■剣(語)
俺と蜜柑さんは今、馬車に揺られて帰路を進んでいる。
■蜜柑
ええ、そうですね。
■剣(語)
今日は常磐さんも居ないし、俺が守らねばっ
蜜柑さんはぼーっと外を見て俺が話しかけても似たような返事だけ。
きっと疲れているのだろう。
■蜜柑
(はやく帰って莉李で癒やされたいです。)
■剣
(それにしても・・・会話が捗らない。)
■剣(語)
なんとか話題を探そうと四苦八苦している俺をよそに
蜜柑さんはハッとした表情でもたれていた状態を起こした。
■蜜柑
・・・・!!
■剣
?
蜜柑さん、どうしたんですか?
■蜜柑
用事ができました、先に帰っていて下さい。
■剣
え、え!?蜜柑さん!?
■剣(語)
蜜柑さんは勇ましく馬車の扉を開けると、
ためらいもなく道へ飛び降りる。
■剣
えええぇえええ!?
■蜜柑
(たしか、この辺に!)
・・・いた!
■剣(語)
俺がなんとか追いつくと、蜜柑さんはしゃがみこんで何かを見ていた。
■剣
蜜柑さん?
■蜜柑
剣、見てください!
黒猫です!
■剣
少し小さい、ですね。
親猫も見当たりませんし・・・どうしたんでしょう。
■蜜柑
決めました、私・・この子を連れ帰ります!
■剣
蜜柑さん!?
この間も連れ帰ってお手伝いさんに怒られたでしょう!
■蜜柑
今度は内緒にはしません、
ちゃんと家に上げるための準備をしてもらいます。
■剣
(大丈夫かなぁ・・・)
■剣(語)
俺の心配をよそに、蜜柑さんは馬車を飛ばして屋敷へ向かった。
お手伝いさんは呆れたような諦めたような顔をして子猫を風呂場へ連れて行く。
■お手伝いさん
剣様、もう遅いため今宵はお泊まり下さい。
梔子のお屋敷には連絡しておきましたゆえ。
■剣
え、は、はい!
(よ・・・予想外のお泊り!)
■蜜柑
剣、お猫様のお清めが終わりました!
私が疲れて寝てしまわないように見張っててください!
■剣
な!!!?
(いやいやいや、未婚の女性の部屋に行くわけにはッ)
■剣(語)
嬉しそうに猫を抱えながら腕を引いてくる蜜柑さんに、俺の抵抗力はゼロだ。
■蜜柑
ああああ、お猫様ッ
■剣(語)
俺の存在など忘れたように蜜柑さんは黒猫と戯れている。
■蜜柑
ほうら、こっちですよー
■剣
え、俺の体を遊具にするのは・・・
ちょ、爪、爪が!!
■蜜柑
それくらい我慢してください。
珍しくお猫様が威嚇せずに剣で遊んでいるのですから。
■剣
俺で遊んでいるんですか!?
■蜜柑
漆黒の毛並み、葡萄のような紫に近いくりっとした瞳、
まれに見る逸材のお猫様ですよッ
■剣
(蜜柑さんが我を忘れている・・・)
■蜜柑
もう我慢できませんッ
飼います、この子飼います!
■お手伝いさん
失礼しま・・・あらあら、熱が入ってしまいましたか。
ダメですよ蜜柑様、そうやって野良猫を飼い始めたら猫屋敷になってしまいます。
■蜜柑
猫屋敷!素晴らしいじゃないですか!
■お手伝いさん
いけません。
■剣(語)
蜜柑さんはお手伝いさんに一蹴されて助けを求めるように俺を見る。
■剣
(うぐ・・・いくら蜜柑さんのお願いでも無理です。)
■蜜柑
くそう、こうなったら今夜はお猫様を堪能します!
■剣(語)
こうして蜜柑さんは自分の腕に飛びついた小さな黒猫に悶えながら、
蜜柑さんは寝ずの一夜を過ごした。
■剣
(俺も一夜を過ごしてしまったわけですが、存在を忘れられているような。
・・・そんな哀れみの視線を向けないでください、お手伝いさん。)
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