2014年12月5日金曜日

脱走

男:女:不問=1:1:1 計3人
死ネタ、恋愛?、シリアス

語り=14
男=16
女=13

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語:彼女は、押し潰されそうな時、なんとなく嫌になった時、今いる場所から脱走する。
  悪戯をした子どものように必死に逃げるくせに、彼が迎えに来たら嬉しそうな顔をして。


女「普段は気丈に振舞って、急に子どものように我儘になる私。
  貴方に迷惑かける私を許してとは言えないけれど、置いて行かないでほしいの。」

男「普段は1人で何処に行っても平気なのに、突然、癇癪を起こす君。
  俺は毎回毎回疲れてるはずなのに、どうしても放っておけなくて。」



語:いつもと同じように、彼女はよくわからないまま逃げ出す。

男「みーつけた。今日はわかりやすい所に居たじゃないか。」

女「遠くに行きたかったんだけど、今日は寒かったの。」

語:彼もいつもと同じように捕まえる。迷惑かけて、迷惑かけられて。お互いに笑い合っていた。

女「ふふ、おかえりなさい。貴方のおかげで凍え死ななくてすんだわ。」

男「なら家の中に隠れていたら良かったのに。」

女「いやよ。それだとすぐに見つかってしまうじゃない。」


語:彼女は、自分がそこに居てもいいのだと示してくれることが嬉しくて。


男「さ、帰ろう。」

女「そうね。近くに居たっていうのに随分と走り回ってスキッリしたみたいじゃない。」

男「あ、ああ。仕事ですれ違いがあったんだ。」

女「ふーん。色々と大変ね。」


語:彼は追いかけてるつもりで、彼女に引っ張られているのかもしれない。




女「今日はここでノンビリ待ってようかしら。」


語:彼女はいつもと同じように、よくわからないものから逃げ出す。


女「ん、今日も早い・・・・って、何方ですか?」


語:彼もいつもと同じように捕まえる。はずだった。


男「今日は中々見つからないな、今まで居た場所を全部探したのに。」


語:彼は家に居る可能性を考えて帰宅した。けれど、彼女は居なかった。
  暗くなる外に比例して不安が大きくなる。


男「こんな事は初めてだ。何かあったのか?」


語:彼が再び外に探しに行こうと靴を履くと、家の電話が鳴り響いた。


男「もしもし・・・?」


語:彼女は、いつもよりずっと遠い木陰で、息もせず、ただ静かに眠っていた。


語:それから日が経っていても、テレビを付ければ犯人像について議論している。
  彼は、すぐに電源を落とすと仏壇の前に座り込んだ。


男「今日も騒がしい。あの日君がいた場所は君が好きな人の居ない静かな場所だったね。
  女神様みたいに眠っているもんだから、つい写真を撮ってしまったのは二人だけの秘密。」


語:彼は、静かに涙を流して悪戯っ子のように微笑んだ。
  次の日、犯人が逮捕されたというニュースが広まった。


男「君をあの場所に連れて行ってくれた人が来たよ。
  君を忘れられなかったみたいだ。あげないけどね。
  何度も謝ってきたよ、そんな必要は無いのに。」


語:犯人は、毎日の彼と彼女のやり取りが羨ましく、今度は自分が彼女を見つけるのだと考えた。
  毎日想っていた女性に否定され、暴れられ、それからはうろ覚えな記憶が残っていたらしい。
  彼は名乗りでたことにお礼を言って、それ以降は何もしなかった。


男「もう見つけてあげる事はできないけれど。」

女「もう捕まえてもらう事はできないけれど。」

男「もうその足は、身体は、逃げまわることはできないけれど。」

女「もうこの足で、身体で、居場所を確認することはできないけれど。」

男「俺が置いていってしまうのではなく、君に置いて行かれてしまったけれど。」

女「貴方に置いて行かれるのではなく、私が置いていってしまったけれど。 」

男「最期に、好きな場所に居られただろうから。」

女「最期も、貴方に見つけてもらえたから。」

男「今も、居たい場所に居るだろうから。 」

女「今も、貴方の隣に居られるから。」


語:男性は、空気を入れ替えるために部屋の窓を開けると、ふわりと風が入ってきた。


男「おかえり。」


----end




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衝動のままの原文

押し潰されそうな時、なんとなく嫌になった時。
脱走してみたくなる。 逃げ出したくなるそうだ。

ただひたすらに居たい場所から逃げ出して、 誰かが探してくれる事が嬉しくて。
悪戯をした子どものように必死に逃げるくせに やっと捕まえたと思えば嬉しそうな顔をして。

普段は気丈に振舞って、急に子どものように我儘で、
君に迷惑かける私を許してとは言えないけど、置いて行かないで。
普段は1人で何処に行っても平気で、急に癇癪を起こして、
毎回毎回疲れてるはずなのに、どうしても放っておけなくて。


●

いつもと同じように脱走する。 いつもと同じように捕まえる。

迷惑かけて。 迷惑かけられて。
お互いに笑い合って。

自分が居てもいいのだと示してくれることが嬉しくて。
意外と、追いかけてるつもりで、引っ張られていたのかもしれない。

なんて事はあったりする。


●

いつもと同じように脱走する。
いつもと同じように捕まえる。

今日は中々見つからなくて、 木陰の下で眠っていた。

いつもよりずっと遠い所で眠っていた。
君が好きな人の居ない静かな場所だったね。

悪戯をした子どもではなくて、 凄く落ち着いていてすごく綺麗だった。
つい、写真を撮ってしまったのは秘密。

次の日、君をあの場所まで連れて行ってくれた人と会った。

その人も綺麗な君を忘れられなくて、 人伝いに此処へ来たらしい。
ごめんなさいと、何度も謝ってきた。

そんな必要は無いのに。


もう見つけてあげる事はできないけれど。
もう捕まえてもらう事はできないけれど。

もうその足は、身体は、逃げまわることはできないけれど。
もうこの足で、身体で、居場所を確認することはできないけれど。

君を置いていくのではなく、こちらが置いていかれたけれど。
君に置いて行かれるのではなく、こちらが置いていってしまったけれど。

最期に、好きな場所に居られただろうから。
最期も、君に見つけてもらえたから。

今も、居たい場所に居るだろうから。
今も、君の隣に居られるから。

ずっとは無理だと知っている。

だから、今だけ。

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