2014年12月3日水曜日

浅葱の幼馴染


私の両親は、風魔の忍らしい。
でも、脱走した裏切り者。

感情を殺す前に二人が愛し合い、私を身ごもり、愛し合えなくなる位ならと逃げ出した。

愛とは、なんだろう。


物心ついた頃には、生き物や命の大切さを語られながら手を取られ、母様と一緒に動物を捌いた。
一人でも捌けるようになった頃には、平和になりつつある世の中を語られながら、父様に連れられて盗賊を捌いた。
一人でも襲ってくる奴ら全部を捌けるようになった頃には、6歳になっていた。
ある日突然、母様が鳥を従えて戻ってきた。

「私の友人がね、村に呼んでくれたの。貴方と同い年の女の子も居るそうだから、行きましょう?」

それが、単に遊びに行くだけではなく引っ越しだったのだと気付いたのは村に行った次の日だった。

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「こんにちは!あなた、お名前なんていうの?」

勢い良く部屋の扉が開かれ、朝日と一緒に目に飛び込んだのは可愛らしい笑顔だった。

「わ、私は日夜見-カヨミ-、貴女は?」

「カヨミ、カヨミ・・・カヨちゃん!私は浅葱っていうの、よろしくね、カヨちゃん!」

ごくり、と唾を飲み込んだ。
昨日までの住まいで遭遇したモフモフの兎を見た時のような気持ち。
・・・・その兎は朝食の為に捌いてしまったけれど。

動物はある程度調理すれば美味しい。
私達と同じ人間は美味しくないと父様は言っていたけれど、目の前に居る浅葱は、あの時の兎のように美味しいんじゃないかと思った。

「よろしく、浅葱!」

そうではない。
浅葱を見て思う事は食欲に近いけれど、もっと違っていて、近くでずっと眺めていたいような。
いっそ食べてしまいたいとは思うけれど、そんな事してしまえば一生後悔すると断言できるような。
この気持ちが消されてしまうのなら、浅葱を連れて何処かへ逝ってしまいたい。

嗚呼、これが両親の言っていた愛なのか。

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たまに、浅葱の母親が母様に送ってきた鳥を飛ばす。
浅葱は鳥の散歩だと言うけれど、足には手紙が付いている。
母親だというのに浅葱に隠してまで何をしているのだろうか。
母様に治安維持のために夜盗狩りをしてくると言って鳥を追いかけた。

「誰だ。母様の鳥を何故追っている。」

驚いた。突然目の前に誰かが出てきた。
目の前に居ても気配が読み難くて幽霊とでも間違えそうだ。

「ある子の母親が飛ばしてたのよ。あの子に危害が無いか確認するために追ってたの。」

「そうか、ならば心配ない。お前の言う奴は母様の姪だろう。」

「・・・・・親戚?」

目の前の不確かな存在は、浅葱の従兄にあたるのだろうか。
似ても似つかないそいつとは、その後も何度かやり取りをした。
たまにムカついて捌いてやろうと思ったけど、手も足も出なかった・・・何者なの。

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「いい感じに育ってるね、カヨちゃん!」

共用の畑にある沢山の菜の花の中で嬉しそうに笑っている浅葱。
浅葱と出会ってから数年が経過した。
菜の花も勿論だが、浅葱もいい感じに育ってると思う。
一緒に収穫をしていると、1つの嫌な殺気が近づいてくる気配がした。

「浅葱、ごめんね。母様に用事を頼まれているのを忘れてた。」

「それは大変!早く行かなくちゃ!」

「うん。・・・そうだ、あの辺りに山菜があったからついでに採ったらいいよ。」

「本当!?ありがとう!」

私を純粋に信じてくれる浅葱。
あの殺気から何としても守らないと。
両親では駄目、あの殺気からすると絶対に敵わない・・・私でさえも。

「あいつに頼るしかない、か。」

私は今までにない全速力で浅葱の親戚の元へ向かった。
向かう途中、判っていたことながら殺気の元とすれ違った。
こちらなど眼中に無く、まっすぐ浅葱の居る村に向かっていた。

「っ、あれはヤバイ奴だ。」

「待て。」

つい先程の事を思い出して身震いしていると、突然腕を掴まれた。
全速力だった私は急停止できるわけでもなく、尻もちをつく。

「いッ」

「すまない。それほどスピードがなかったから問題ないと思ったのだが。」

聞いたことのある声に顔を上げれば、これから頼ろうとしていた奴が居た。

「それより、この辺りで不審な集団を見なかったか?」

「!見た!浅葱の所、浅葱が殺されてしまう!」

酸欠で悲鳴をあげていた肺を無視して一気に告げる。
言い終えた直後、目の前からアイツが居なくなっていた。
もしアイツが言ってる集団と違っても、無視はしないだろう。

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悲鳴を上げる身体に鞭を打って、出来る限り早く戻った。
村に近づくにつれ何かが焼けたような匂いが鼻につく。
自分の家がどうなったかなんて興味が無く、真っ直ぐ浅葱の家へ向かう。

「父様、母様・・・・。」

道の途中で、お互いに心臓を貫いている両親を見つけた。
拷問具が中途半端に付いている事から、まあ察した。
浅葱の家に着けば、血の匂いがする。

「樹音さん・・・。」

娘より愛した人への想いを優先した人。
攻めたりはしない。

「貴女が旦那さんをとるなら、浅葱は貰いますね。」

この家には浅葱は居なかった。
生きている可能性は高い。

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村をある程度片付けた頃にアイツが来た。

「この村の生き残りは浅葱とお前だけだ。」

「私は浅葱が生きていればいいの。何処に居るの?」

「・・・・・・。江戸にある千草という奴の妓楼に預けた。」

「妓楼!!?」

「お前も働き口が必要だろう、風魔に来るか?」

「いいえ、忍にはならない。私も妓楼で働く。」

「・・・お前、わかっているのか?」

「ええ勿論。浅葱の気持ちを理解して支える為だもの。」

そうと決まれば、私はアイツを放置して江戸へ向かった。

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「ここで私を働かせなさい。」

「申し出は嬉しいんだけど、突然2人も雇えないよ。」

千草という奴の妓楼は有名らしく、江戸に来てすぐ見つかった。
呼び出してみたけど、目の前に現れた奴は若すぎる。
浅葱が毒牙にかかってしまいそうだ。

「浅葱が居るのでしょう?同じ村出身なの。私なら今の浅葱を支えられる。」

「麗奈は強い子だよ。状況も理解しているし、今も建物を探索している。」

思い出したようにクスリ、と笑う千草に盛大に苛ついた。
麗奈、とは浅葱の今後の名前だろう。

「別に妓女じゃなくてもいいの。下っ端でもいい。浅葱の近くなら。」

「じゃあ、私の所でいいかな?」

千草に襲いかかろうかとでも思ってたら、横の建物から千草と同い年くらいの男が出てきた。

「来栖、一応女の子だし君のところは流石に・・・」

一応とは失礼な気がする。
来栖という奴の建物は男娼屋。
浅葱の近くに要られるならどこだっていい。

「いいわ。男娼屋だろうと浅葱と居られるならそれで。」

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こうして私は浅葱を追って江戸に移り住んだ。
千草のせいで中々会えないし、私が会わないうちに知らない女の子たちと仲良くなるし。
でも、私が行くと嬉しそうな顔をしてくれる浅葱が愛おしい。

浅葱は麗奈になって、口調も表の性格も変わってしまった。
兎から狐になったような、綺麗な麗奈。
でも、私の前ではあの頃の美味しそうな浅葱に戻る。

明日も当主様や赤鬼が来るらしいので乱入してみよう。

浅葱の驚く顔が楽しみだ。



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end


カヨちゃん、表はとっても明るいの(´・ω・`)でも私のせいで内心が病気、おいしい。

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